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『65歳でバイクの免許を取った話』──遅いなんて言葉は、自分で作っていた

バイクに自分が乗るようになるなんて考えてもいなかったのに、今では私の一番の趣味となったバイク、もうすぐ65歳の(昔で言えば)じいさんが、なぜ乗りたくなったのか ?   すんなり免許が取れたのか ?   実際に公道を走って、迷惑をかけなかったのかなどなど、赤裸々に語ります。

1. きっかけ:静かな日常に落ちた「一滴の使命感」

まさか私がバイク乗り ?   一体何が起こったのでしょう ?

進学のために地元を離れることになった私の次男坊、
ここにいる間に父と子との忘れられないような思い出を作りたいなぁ。
何かあったら『あの時一緒に行動したオヤジ』を思い出して元気をだしてほしい。

こんな、父親だったらごく当たり前の思いが出発でした。

「何がいいだろう ?」

ただでさえ難しい年頃の息子
息子が好きなものに寄り添ったほうがいいのでは ?

息子はというと
250ccのバイクに乗っていました。
改造や無謀な運転はしない子で、ただおとなしく好きなバイクに乗っていました。

「そうだ、息子と一緒にツーリングできたらいいな」

「でも待てよ、オレは免許持ってない  !」

息子が旅立つまで、もう半年しかありませんでした。
「すぐに免許を取らなきゃ !  教習所に通わなきゃ !」

そんな経緯でもなければ、今でも息子が乗ってるバイクを遠目に見てるだけだったでしょう。

2. 葛藤:「自分への言い訳」との戦い

何日か迷いましたよ。
だって不安な要素ばっかりなんですから。

若くないし、二輪なんて運動神経を問われそうでしょ ?
私は運動音痴ですから(笑)

あと何年かしたら「もう、免許返納しなさい」って言われる歳だし、
無理して乗って事故起こしたら、それこそなんて言われることやら。

「バイクの免許なんて、もう遅いんじゃないか?」

教習所だってお金かかるし
バイクはもっと高い
ヘルメットとか、それ用の服も高そう。

そもそも入校させてくれるのか ?
コロナ(当時ほぼピーク) で一人で乗れるのがいいと、バイクが急に人気を得て
二輪の教習所では入校お断りしてるとこもあるそうだし。

コロナの影響で電子部品の輸入が滞り
車と同じようにバイクも生産が進まず、入庫待ちが何ヶ月も続くとやら。

こんな状況で、免許取ったりバイクを納車したり
あの子がこちらにいる間にツーリングできるのかな?

免許取ったって、バイクが納車されてから
ツーリングできるようになるまで
どこかで練習して技量を上げとかないと
息子に迷惑がかかるし・・・

こんな感じで、実現できない要素がたくさん出てきます。
『免許を取ってバイクに乗る』という
私にとっては高すぎるハードル。

「やっぱりやめとこうかぁ」

そんな『誘惑』や『迷い』『逃げの心』が襲ってきます。

でも、来年の今頃には身体の何処かが不自由になっているかも知れない
「頑張って免許取ってバイクに乗って息子との思い出を作るんだ!」
こんな気持になるのは、息子が旅立つ前の今しかない。

そもそもそんな気力があるうちに新しいことを始めるべきだ

『もう遅い』なんて言葉は
自分で作っていただけかも知れない

そんな思いでなんとか乗り切って、
教習所の門を叩いたのです。

3. 実践:教習所という「異世界」での奮闘

教習所は何ヶ月かあれば、きっと取得できるだろう、
でもバイクは、
メーカー届かないかも知れないから先にバイク屋さんに行きました。
数日前に試しに見に行ったときは、
ディーラさんなのに、4台しか置いてないのです。
「今売り物のバイクで新車はこの4台だけなんです」

衝撃の事実。

コレはなんとしても手に入れなければ、息子が先に出ていってしまう。
というわけで、注文だけはしておきました。

日頃、お金の無駄遣いはしてはいけないと偉そうに言っている立場上、
家族の誰にも秘密でした。

で、教習所のお話。
恐る恐る「あの〜、この歳でもバイクの入校出来ますか ?   空きはありますか ?」

受付の方
「良かったですね〜、きのうキャンセルが出たんですよ」

ホントか嘘か知りませんが、
入校出来ました。
でも実技の講習開始はひと月後  !

実技講習開始初日
400ccのバイクを倒して起こす練習

「おっ、重い !」
でも起こせないと、一人で街乗りも出来ないわけで。
なんとか起こせましたが、女性は苦労しています。

高校生の時に原付きには乗っていましたが、
ひっさしぶりに乗ると
その向かい風とエンジンの音の大きさに驚きました。

「あぁ、生身の身体で乗ってるんだなぁ」

生徒は若い人のほうが多いですが、
平日の昼間ということもあって、意外と年輩の方もおられるのです。
私よりも見た目では年配  ?  っぽい方も通ってこられています。

普通自動車免許を持っているので、交通法規などの座学はないのですが、
教えていただくというのはほんとに久しぶりなことで
社会人として定年に近づくにつれて誰からも教わるということがなくなり
とても新鮮で楽しい時間でした。

歳を取っているからなのか、教官も優しく接してくれます。
中途半端な年齢だと、若者に負けられないという
変な意気込みがあるかと思いますが、
ここまで歳が離れると、『上手く出来なくて当たり前』みたいな
都合のいい考え方ができて、気負わずに済みました。

小さく8の字を描く練習があるのですが、
みんな怖くて前のタイヤのすぐ先を見てしまうんです。
そこで教官が「自分のバイクを信頼して曲がる方向の先を見つめてバイク傾けてー」
とおっしゃいます。なので、本来首はその方向に横を向いたままなんですね。

それを私、そのまま実践できて、教官から褒められました。
なんだかとても嬉しかったです。

家にいると、家内が突然「何処かに行ってるの ? 」
と聞いてきました。
鋭いですね。

「あぁ〜、バイクの教習所に通っててさ」

内緒で通っていた後ろめたい気持ちと、
怒られるんじゃないかという不安で
顔がひきつっていたと思います(笑)

で、家内は
「へぇ〜、私も通いたかったの、バイク」

って言ってくれて、
心のつかえが吹き飛んで、以前より前向きに取り組めるようになりました。

なので、息子にも話したら、
「衝動買い?」って聞き返されて、
とても焦りました。

まぁ、衝動買いに近いバイクの買い物と教習所だったからです。

4. 転機:小さな成功と「視界の広がり」

実技の課題はたくさんあるのですが、私は通称『一本橋』と呼ばれるものがとても苦手でした。
幅が30cmで高さが5cm、長さ15mの板の上をゆっくりゆっくりと 7秒以上かけて落ちないで走り切る という課題です。

教官によると、年配者ほど難しいらしく、平衡感覚の衰えが原因らしいとのこと。
そして女性より男性の方が苦労しているとのことでした。

私は成功の確率、およそ 1/20  笑っちゃいますよね。
このままでは卒業検定、20回受けなければ合格しないという確率です。


—– 筆者ではありません —–

自分には無理かもしれないって思い始めていました。
息子と走ることを諦めようかとも思いました。

実際、卒検には一度落っこちました。 一本橋以外は、ほぼ完璧でした。

悔しくって、息子に話したら
「パパは自転車にも乗ってないんだから仕方ないよ」と
慰めてくれました。

息子の自転車を借りて、道路の白い線の上を走る練習をしたり、
夜勤のときに暗い施設の廊下を、一本橋の上をイメージしながら小走りに走ってみたり、

一度卒検に落ちると、次の検定までに最低一度の講習が義務付けられています。

その講習で、「一本橋を集中して教えて下さい」 と頼み込みました。
その時の教官が私の一本橋の走り方を見て「バクチですね、危なくてしょうがない」

と、私にあっているであろう技を教えてくれて、そのとおりに練習しました。

そしたら、
教えていただいてからは、一本橋を一度も落ちることなく走りきれるようになりました。
ものすごく自信がつきました。

次の卒業検定では、4人が受験して 合格は私一人だけでした。
私が一番の年長者でした。

補修の一時間、あの教官にはホント感謝です。

心は晴ればれ、
自分に合ったやり方というものがあって、それさえわかれば
出来なかったものも出来るようになるんだ !

もっと若いうちに悟るべきことを
今やっとわかった瞬間でした。

5. 結び:免許証を手にして見えた新しい景色

合格をした次の夜勤明けの日、
普通なら自宅で一眠りするのですが、
その日は県の運転試験場へ行って、免許証の交付をしてきました。

免許証の種類のところを何度も見ました。
『普自二』あぁ、自分にもバイクの免許が取れたぁ !
私にとっての最高のクリスマスプレゼントでした。

注文していたバイクの納車は、年明けそうそうになるそうです。
息子とのツーリングの日程は、リミットまで2ヶ月半残ることになります。

納車されてからは、雨と大風の日以外は、平日休日関係なく、昼夜も関係なく、
とにかく練習に走りました。
近くの住宅街や遠乗りも『慣らし運転』も兼ねて走りました。
その日までに、2000kmも走り込みました。

いよいよその日、
ドキドキです。
ゲロ吐きそうなくらいです。
私が前で、息子が後ろを走ります。

車とは全く違った景色。
冬の晴天の青い空、
地域の産業と直結している空気の香り、
身体に伝わるエンジンの振動、
自分で操作しているという感動、

恒ちゃんと初ツーリング 秩父

息子と二人だけの時間、
約200kmの道のりを無事に走り切りました。

景色なんか楽しむ余裕はなかったけど
楽しかったなぁ、嬉しかったなぁ。

何年か経ってから息子に聞いたら
「僕も楽しかった」
って言ってくれて、
本当にいい思い出を作ることが出来ました。

何かを始めるときに
遅すぎるなんてことはありません。
自分で勝手に制限をかけてはいけません。

年齢なんてものよりも、
今の気持ちを大切にしましょう。

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